子育てあれこれ

出産・育児・ぼやき

最後の診察

じつは、入院前の検診で、主治医が
「入院したら、手術の前に、最後に診察をして、本当に下から産めないのか確認しますから」
って、励ましてくれていた。

まさか、そんな奇跡みたいなこと……って思っていたけど、ほんの少しだけ、その可能性に掛けていた。

無駄とは知りつつ、めぐリズムで腰部~臀部を暖めてみたり、赤ちゃんに語りかけてみたり、軽くストレッチしてみたり、保育園のお迎えに行ってみたり。赤ちゃんがゆったり降りてこられるように、ずーっとあぐらをかいていたり。
(自分なりに色々したつもりだったけど、大したことしてないな)


……けど、やっぱりダメだった……(T-T)


夕食前、外来を終えた先生が病室まで呼びに来てくれて、内診。
はじめて、胎盤に繋がる静脈のエコーも見せてもらった。
エコーの画像には、子宮の出口、赤ちゃんの頭、そして、赤ちゃんに栄養をあげるために、臨月に入ってますます血気盛んになっている辺縁静脈洞が映し出されていて、主治医が丁寧に説明してくれる。

色々調べたけれど、ネットには低置胎盤のことは載っていても、辺縁静脈洞は症例数が少ないのか、掲載されているホームページはあまりなかった。

わたしの場合は、胎盤自体はそんなに下にある訳ではないのだけど、胎盤に栄養を送るための母体の静脈の集合体(静脈洞)が、子宮口のかなり近いところにある。

今日、37週6日の時点で、赤ちゃんの頭も下がってきていて、少し子宮口も開いている。
これがさらにお産が進み、10センチの全開になったとき、恐らく静脈洞は破裂するだろう、と。
勿論、その時になってみないことには分からないけど、可能性はかなり高くて、もし陣痛がきて、赤ちゃんが降りてきたときに破裂したら、すぐに運ばれてきても輸血と緊急帝王切開になると思う、と。

エコーを素人目に見ても、かなり子宮口から近いところに血流の塊があるのがよく分かった。
でも、この血流が赤ちゃんを、今日まで元気に生かしてくれてるんだから、多少位置が悪くても、感謝を、しなくてはね……。

最後の最後まで、しっかり診てくれた主治医ありがとう。
でも、
「いやー惜しいですけどね。ここで退院する人もいるから……」
とか言われると、こっちも悔しくなっちゃう。わたしだって退院できるものならしたかったよ!!


母親や妹は、この気持ちは全く分からないみたいで、明日には赤ちゃんに会えるね! 母子ともに無事が一番!! って言ってる。
それはそれで、ありがたいんだけど。
たぶん約5年前の、死線を乗り越えたお産を見ているからなんだろう(^^;
子宮を取るかも知れません、って病状説明受けてたし、血液内科医も驚くくらいに、血液製剤をバンバン使って救命してもらったほどだったから。


だけど今は、産科病棟にある、ドーナツ型の椅子や、周りの女性患者さんたちを見るだけでも辛い。
5年前に入院した部屋と、まったく同じベッドにいるのに、全然状況や気持ちの在り方が違っていて、自分でも驚いてる。

あのときは、生きてるだけでも、凄い感謝だったのにな……。
改めて周りを見回すと、な~んか、自分よりも、全然余裕そうな妊産婦さんが多く見えてしまう。絶対そんなことはないのだけれど。結構ナースコールの音も頻繁に聞こえるし。

間もなく消灯の時間だけれど、21時ジャストに眠れるはずもなく。Amazonさんで、創傷処置のテープを注文しておこうかな。


明日の手術は、一番目。
ちょうど今から12時間後に出棟して、13時間後には、一人が二人になっている。
今も、お腹のなかでは元気に動いてる赤ちゃんが、遂に外界に出てくる。
38週間、ずーっとずっと、片時も離れず、一緒にいた存在。生命になる可能性の存在から、今はもうひとりのりっぱな人間になって、母胎から産まれてくる。
すごくすごーく嬉しくて、喜ばしいことなのに、ほんの少し、寂しいような気もする。
一度でいいから、自然に産んでみたかったな、とか。(縦切り確定なのでVBACも出来ない)
もう二度と胎動を感じることもないんだな、とか。
おなかに、大きい傷が出来ちゃうんだな、とか。


産まれる前から、すでに母子分離不安。